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2013/07/12

第3回TJCRO

第3回TJCROは、高知大学医学部放射線医学講座教授)の小川恭弘先生に御講演いただきました。講演後にコメントをいただきましたので、掲載させていただきます。

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 2013年7月12日に「増感放射線療法KORTUCの基礎と臨床」というタイトルで第3回TJCROにてお話をさせて戴きました兵庫県立加古川医療センター院長(その当時は、高知大学医学部放射線医学講座教授)の小川恭弘です。
 今年の2月にようやく増感放射線療法KORTUCの本が篠原出版新社から出版されました。KORTUCの著明な局所効果は、東京放射線クリニックや大阪医科大学、長崎県島原病院でも確認されており、これまでに、500例以上の癌患者さんにKORTUCを用いた増感放射線療法が行われ、大きな成果を挙げております。KORTUCの作用メカニズムについても、本の前半で詳しく紹介されており、これまでの「放射線の効果はDNA障害である」という定説を「放射線の効果を最大限に発揮させるためには、DNA障害以外に、リソソームやミトコンドリア由来のアポトーシスを起こさせることが必要」というように変えていく必要があることがよく理解できます。
 ところで、これまでの放射線増感剤としては、ミソニダゾールやドラニダゾールというようにラジカルを酸素の代わりに固定するという、イミダゾール環を持つ化合物について研究が行われてきましたが、放射線増感効果よりも末梢神経障害の副作用の方が大きく、いずれも臨床現場で用いられるに至りませんでした。
 すなわち、イミダゾール環を有する化合物や高圧酸素下での放射線治療のように、それぞれ酸素の代役や酸素だけでの放射線増感には無理があり、やはり、癌の「鎧(よろい)」である抗酸化酵素ペルオキシダーゼを失活させるということも酸素の存在と同様に大切であります。このように、ペルオキシダーゼを失活させると同時に酸素を供給できる物質としては、過酸化水素以外には存在せず、過酸化水素の効果を一定時間保持させるためにヒアルロン酸を用いているのがKORTUCの大きなオリジナリティであると言えます。
 KORTUCの適用される癌種は幅広く、手術不能の各種の局所進行癌の局所制御はもちろん、I, II期乳癌に対する手術なしでの乳房温存療法、局所進行肝細胞癌に対する動注化学塞栓療法の増感、局所進行膵癌に対する開創照射 (IOR) の増感、さらには、放射線治療後の局所再発に対する再照射の増感など、本来、KORTUCの対象とすべき患者は、予想外に多いものと思われます。
今後この日本発のオリジナルな放射線増感療法であるKORTUCを世界に広めていくためには、よく計画された臨床比較試験が必要ですが、何分、KORTUCで用いる薬剤が安価であるため、国内の製薬会社はKORTUCの製剤化に積極的ではなく、現在、イギリスでの臨床比較試験が検討されております。このような日本発のオリジナルな研究成果が、わが国で実用化されないとなると、わが国にとってその社会的また医療経済的な損失は大きく、ぜひ日本でもTJCRO等で臨床試験を行って戴き、KORTUCの製剤化が早急に進捗することを強く期待したいものです。
なお、本講演後には参加された多くの若手の先生方から多数のご質問をいただき、「KORTUC」という新しい増感放射線療法に興味を持っていただけたことをとても嬉しく思いました。放射線治療のさらなる発展のためには、治療機器や技術といった物理的な進歩のみではなく、癌そのものの放射線感受性を高めるという生物学的なアプローチが必須であります。TJCROの先生方には放射線生物学研究の進歩にも常に関心をお持ちいただき、より多くの癌患者さんを助けるために頑張って戴ければと存じます。